人間風車

2002/07/04(木)
【嫉妬】

自分の中にわき上がる情動のうち、
もっともやっかいなものの一つに「嫉妬心」がある。
岸田秀によれば
「嫉妬とは、自分にもそれを得る権利があると思っている事象を、
自分が得られないで他人が得ているという
状況になったときにわき上がる感情」みたいなことらしい
(なにせ20年近く前に読んだので、精度は怪しい)。
ここでポイントとなるのは、
「自分にもそれを得る権利があると思っている」ということは、
客観的な事実である必要はなく、
権利があるという勝手な思いこみでいいということだ。
誰だって、ある程度、
セルフイメージが実際の自分より拡大しているので、
誰だって本来の自分以上に、嫉妬してしまうということだ。
セルフイメージが異常に拡大した人や万能感に満ちている人は、
「あ、それホントなら俺にもできたはず、得たはず」
と思うことが多いから、
その分、嫉妬心がわき上がることが多くなる。
嫉妬心は、誰にとってもチクチクした不快な情動だし、
カッコワルイ情動であるので、
そういう気持ちがわき上がったことを素直に認めることは、
なかなかつらい。
そのため、嫉妬の対象のアラを探して、
そこを批判すること(攻撃すること)で、
嫉妬心のエネルギーを解消して、
そういう自分の中の認めたくない
情動はなかったかのようにしようとする。
こうした心の防衛は誰にでも起こることだ。
誰だって、
セルフイメージが実際の自分より少しは拡大しているので、
本来(第三者からみたら)
そんな権利がない対象に対してだって、嫉妬する。
ぼくらはいつも嫉妬し、その気持ちを隠そうとしている。
嫉妬心が起こることを押さえるのは、
われわれ凡人にはむつかしいけれど、
嫉妬している自分を素直に認めることは、わりと簡単にできる。
ぼくは、このことだけは注意をしている。
嫉妬の対象は、だいたいは同業者
(と勝手に自分が思っているだけの相手も含めて)
の作品に対してだけど、
嫉妬心を認めたくないがために、無理な批評をしたり、
無視したりしては、
自分のクリエイティブに対する感覚を狂わせてしまう。
嫉妬した対象を素直にほめるのは難しいので、
そんなときは「嫉妬しているんで、素直にほめられない」
と言ってしまうことにしている。
こういわれた相手は、だいたいほめ言葉と取ってくれるし、
あっさり「負け」を認めたに等しいので、
けっこう素直に「よ~し、おいらも頑張る」
という気持ちに持っていける。
また逆に、しょうみ、嫉妬心がわかないときがある。
ボクの場合で言えば、
マンガはすっかり嫉妬の対象からはずれてしまった。
誰の作品でも、素直におもしろいと言えてしまう。
それはきっと、
ぼくがマンガという土俵からすっかり
降りてしまったということなんだと思う。
いちファンという立場になってしまっているので、
「自分にもそれを得る権利がある」
なんてこと思わないと言うことなんだろう。
と考えれば、それに嫉妬をするってことは、
まだその道で「生きている」ってことの証なのかもしれない。
と思うことにしている。

岸田秀の「嫉妬の時代」(青土社)

ps:
それはそうと、今日もツボにはまってしまった
(いつも朝方のヘロヘロな時間にこれを書いているので、
こういう直球にはまってしまうのだろうか)

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