MMTV アストロノーカ

バブー研究室



バブーとは何か

一言でいうと、謎だらけの生物です。

‥‥というより、あまりにマイナーで害の少ない生き物であるために、マジメに研究する者がほとんどいないのです。
なにしろ宇宙には、人を食ったり血を吸ったり精神エネルギーを奪ったりと、シャレにならない怪物がたくさんいますから、ただ畑を荒らすだけの生き物など、とても害獣とは呼べません。
しかし、農家にとっては、「害の少ない生き物だから」などと呑気なことは言っておられません。育てた野菜を食われるというのは、農家にとっては最大の屈辱ですから。

バブーが目撃されているのは、宇宙の中でも、ほんの一握りの地域でだけ。その地域の多くは、農業の盛んな場所です。
宇宙では珍しくないことですが、バブーは世代交代によって、姿形を大きく変化させる生き物です。それゆえ、いろいろな姿をした生き物が、バブーという同一種であることは、長い間わからないままでした。彼らは、各地で、じつにさまざまな呼ばれ方をしていたのです。

バブーが16種の姿形を取る生物であることが判明したのは、200年ほど前のこと。
バブーに魅せられた物好きな‥‥いやいや、好奇心旺盛な生物学者、テンカフン・フォン・ジジプリアーニ博士が、本格的にバブー研究に取り組んだ成果でした。テンカフン博士はこの生物を「バブー」と命名、それからこの呼び名は、全宇宙の標準となったのです。
ちなみに「バブー」とは、この生き物が最初に発見された場所とされる西銀河のアンドレイエフ星の言葉で、「ヘンなヤツ」という意味です。

テンカフン博士は現在も存命しており、バブー研究の第一人者として、精力的に研究をすすめている。‥‥はずなのですが、はかばかしい成果は挙がっていません。
いい歳をしてギャラクシーパチンコにはまって研究どころではないという話も聞きますが、きっとただのウワサでしょう。

では、これから16種のバブーについて解説してゆきましょう。



バブバブー

500年前、もっとも最初に発見されたバブーです。前述のように、場所は西銀河のアンドレイエフ星。記念すべき第一発見者は、この星で農業を営むヤマガタさんの家の一人息子、当時6歳のススム君です。 ススム君が夜明け前に小用をたそうとして、でもトイレは遠いので外に出てやっちゃえと考えて裏口から出たところ、奇妙な生き物が目の前に立っていました。ススム君はその生き物としばらく見つめあい、その後おもむろに、「とうちゃん、バブー(アンドレイエフ語で、ヘンなヤツの意)がいるよー!」と叫んだそうです。 それから300年後、この言葉がそのまま、奇妙な生き物の名前になりました。

バブバブーは、もっともバブーの原種に近い存在ではないかと言われています。つまり、この宇宙に最初に誕生したバブーはこの姿をしていたのではないかということです。そして現在でも、いちばんたくさん目撃されているスタンダードなバブーです。

最後に、バブバブーとは、アンドレイエフ語で、「うーむ、ヘンなヤツ」という意味です。ススム君の叫びに目をさましたヤマガタさんは、問題の生き物を一目見るなりこう呟いたのでした。

 



バブニー

銀河中央のある星に、独身者の若い農夫がいたそうです。名前はジョン。ジョン君は孤独な暮らしをしていましたが、ある日、庭先に知らない生き物がいるのを見つけました。ジョン君はその生き物をすっかり気に入って、「ジェニー」と名付け、来るたびに野菜を食べさせてやりました。そのうち生き物は毎日欠かさずやって来るようになり、ジョン君はジェニーが来るのを、恋人を待つように楽しみに待つようになりました。

やがてジョン君の縁談がまとまり、隣の星に婿養子にゆくことになりました。出発の日、ジョン君が「おまえとも今日でお別れだよ」と告げると、ジェニーは何度も振り返りながら、草原のかなたに消えていったそうです。彼女(?)が去ったあとには、プレゼントのつもりか、大量の羽が落ちていたということです。

‥‥という話はテンカフン博士の大のお気に入りで、酔うたびに泣きながら同じ話を繰り返すので、まわりの人は大いに閉口していたそうです。 ともあれそういうわけで、この姿のバブーはジェニーにちなみ、バブニーと名付けられました。

 



バブチャカ

バブチャカが最初に発見されたのは、400年ほど前。場所は東銀河随一の大都市、グッドコロンバス市です。深夜に現れ生ゴミをあさる妙な生き物がいるという通報を受け、グッドコロンバス警察159分署のウーロン下級巡査が見張りをしていたところに、バブチャカが現れたのでした。ウーロン巡査は捕獲を試みましたが、あっさり逃げられてしまいました。「すごくチャカチャカした感じだったんで、わしゃチャカチャカと名前をつけてやったんじゃ、ふぉふぉふぉ」というわけで、同巡査によりナゾの生物は「チャカチャカ」と呼ばれるようになりました。

以来、ごくたまに夜の町にやって来るチャカチャカは、野良猫や野犬と同レベルの扱いを受けるようになり、これといって迫害されることもなくテキトーに無視されてきたわけです。

数百年後、養老院で余生を送っていたウーロン元巡査は、チャカチャカが実はバブーの一変種だったと聞かされると、「あ、そう。それよりわしのチョコレートをボブのやつが横取りしよったんじゃよ!なんとかしてくれ!」と語ったということです。

 



バブール

比較的最近、ほんの200年ほど前に発見されたバブー種です。

発見されたのは銀河辺境の、JL-ろ-632星ですが、当時は学会からおおいに注目されました。その形から、「これはもしや、名のみ知られて存在が確認されていなかった幻のアリクイ、ウタマロオオアリクイなのではないか?」と大騒ぎになったのです。「しかし3本足なのはどういうことだ?」「うーむ、もしかしたら、現れると銀河が滅ぶという伝説を持つ、あのカスタネットオオアリクイなのでは?」などと、動物学会ではケンケンガクガクの議論が交わされたものです。

しかしすぐにバブーの変種であることがわかり、とたんに学会でも全く話題に上らなくなりました。動物学会議長のヤマモト博士は「ぷぷぷっ、なーんだ、って感じだぜ。今夜は湯豆腐が食べたいなー、とか考えちゃったぜ、てやんでえ!」と語ったそうです。

 



バブロン

西銀河のニョクマム星に住む配管工、テフロン・マーチン氏の身に起きた、おそろしい出来事についてお話しましょう。

あるとき、マーチン氏は親戚の法事のため、2ヶ月ほど家を空けることになりました。ところが旅行から帰ってきてみると、家の食料は何者かに食いつくされ、床には正体不明の動物の足跡が‥‥。しかしおそろしいのはここからです。警察に連絡しようと町を歩いていると、知人が「やあ、テフロン!昨日はどうしたんだ?」と声をかけてきたのです。「昨日?何のことだ?おれはたったいま帰ってきたばかりだが‥‥」「ハ、ハ、ハ!あいかわらず冗談が好きだなテフロン、昨日この先の街角で会ったばかりじゃないか!そういえば昨日は、おまえさん全く無口だったが、また女にフラれたか?」‥‥この知人だけではなく、会う人会う人、マーチン氏はずっと家にいたと思いこんでいるのです。これは、もしや噂に聞くドッペルゲンガーか?

‥‥数日後、ナゾは解けました。道で近所の奥さんに挨拶していたときです。「あらあらまあまあ、それで宅の主人ったらね‥‥、あら?あらあらあら、あそこに立っているのもマーチンさん、ここにいるのもマーチンさんよね?あらあらあら、どうしましょ、マーチンさんが2人になっちゃったわ!」

マーチン氏が振り返ると、そこに、妙な動物が立っていました。つまりこの奇妙な動物のことを、みんなマーチン氏と間違えていたというわけでした!

以来マーチン氏は、一生「バブーのそっくりさん」と言われつづけたそうです。もちろんこの事件の犯人であるバブーの種族名「バブロン」も、マーチン氏のファーストネームにちなんで名付けられたものです。

 



バブボーン

バブボーンは、ちょっと可哀想な境遇にあったバブーです。

南方面銀河では、一時期、リアルダンジョンという遊びが大流行しました。20世紀のコンピュータゲームが生んだ「迷宮探索」の楽しみを、生身で体験してしまおうというものです。最初のうちは巧妙に作られた仮想空間の中をプレイヤーが歩き回るものでしたが、そのうち本当に石でダンジョンを作り、本当に生きているモンスターを放つ、というところまで行きました。

とはいえあくまでゲームなので、プレイヤーの持つ剣は刃のついていないものですし、放たれるモンスターも、ほんとうに危険では困ります。そこで目をつけられたのが、バブボーンだったのです。ちょっと不気味で凶悪そうな外見ですが、じっさいは野菜を食べるだけの無害な生き物。ダンジョンゲームのザコ敵として、理想的だったわけですね。

そういうわけでバブボーンはどんどん捕獲され、ダンジョンに入れられては、刃のついていない剣でボコボコ殴られるという、けっこう悲惨な境遇にあったのです。

25世紀に入ると、リアルダンジョンは各種愛護団体の非難の的になって急速にすたれてゆきました。バブボーンもようやく理不尽なイジメから解放され、現在では野に生きる害獣として、他のバブーと同様に農家の庭先に現れてはトラップに引っかかっています。

 



バブトット

全てのバブーに、なんか面白いエピソードがあるわけじゃありません。えー、このバブトットは、これといった逸話のないバブー種です。あ、一部では、その大きな耳から、「穴ホウレン草クン」と呼ばれています。はい。

 



バブチル

バブチルは、後ろ向きで歩く、かなり珍しい生き物です。背中にも目のような模様がついていますが、これは「疑似眼」という名前で、正確にいえば目ではなくセンサーのようなものです。このセンサーがあるために、後ろ向きでもちゃんと歩けるわけです。

ところで宇宙には、後ろ向き競歩というスポーツがあります。その昔、太陽系地球の小学校の運動会で、ごくまれに行われた競技がもとになっているそうです。競技人口はたいへん少ないのですが、ちゃんと協会もあります。バブチルは、その「宇宙後ろ向き競歩協会」のシンボルキャラクターになっています。

一時期、協会内では、「後ろ向き」という言葉の定義について意見の対立がありました。 「バブチルは後ろ向きに歩いているというより、体の両面が前向きなのだ。だからシンボルキャラクターから降ろすべきだ」という声があったのです。協会会長のバートン氏は、「これは協会の存続に関わる大問題だ。ふと我にかえると、ものすごくどうでもいい事柄のような気がするが、きっと気のせいだろう」と声明を発表、協会幹部を集めて1週間徹夜で議論を続けました。

結局、「後ろ向きとは、正式な目のついている方向の反対側」というのが、協会の結論でした。以来、体のヨコに目のあるヒラメイア星人は、カニ歩きしなければ「後ろ向き」とは認められなくなり、後ろ向き競歩ではたいへん不利になったそうです。 まあそういったわけで、バブチルは、宇宙的に正式に認められた、「後ろ向き歩き」の生き物なのです。

 



バブックス

バブックスは、一時期たいへん人気のあった、珍しいバブーです。

とあるアニメーション映画の主役キャラクタに似ていたことから人気が出て、捕獲されてペットショップなどで売られていたのです。

が、バブーというのは狭い家庭で飼うにはあまり向いていない動物で、凶暴性は全くないのですが、見かけ以上に力が強いので家具や柵をどんどん壊してしまいます。また、寝ているかうろうろしているか野菜を食っているか、とにかく行動パターンが単調なので、見ていてもあまり面白味がなく、それに何より、人間にまったく関心を示しません。 きっかけとなったアニメーションのブームが去ると同時に、バブックス人気もすっかり影をひそめました。現在は、ただの迷惑な生き物です。

 



バブペリ

バブペリも、これといった逸話のないバブーです。透明なボディから、一部の農夫たちは「透明キャベツくん」と呼んでいます。

 



バブティーナ

バブーの中で、唯一、文学作品に登場するのが、バブティーナです。

26世紀の農村歌人、綾小路吉岡ヒロシの処女歌集「畑の土に突っこんで」の中に、バブティーナを歌ったものがいくつかあります。


 
夕闇に まぎれてきたる バブティーナ
おさげが似合う 歳は十六?
 
バブティーナ 引っかけるなら 落とし穴
そう決めている おしゃれな私
 
バブティーナ おおバブティーナ バブティーナ
ニンジンだけは 許しておくれ

ちなみにこの歌集は、「よくわからん」ということで、歌壇から黙殺されています。

 



バブモル

バブーの分類と命名を行ったテンカフン博士は、名前を考えるのに1年以上の時間をかけたといいます。が、この「バブモル」は、たった1分で考えた名前です。

テンカフン博士の弟子であったコスケ氏によれば、ある朝、「ついに完成したぞ!」と博士がいうので分類表を見てみると、そこに並んでいるバブー種の名前が、15個しかなかったそうです。「先生、バブー種は16種類ですので、名前がひとつ足りないんですが‥‥」「あー、そう?そりゃ、つい頭から漏れちゃったんだな。じゃ、漏れたバブーということで、バブモレにしよう。がはははは!」

バブモレでは、いまにもトイレにかけ込んでゆきそうな名前であまりにも可哀想だということで、コスケ氏が「バブモル」と勝手に変更。テンカフン博士も弟子の変更に気づかないまま、「バブモル」は正式名称になってしまいました。

いい加減な名前をつけられてしまったバブモルですが、本人(?)たちは気にする様子もなく、今日も元気にどこかの畑を荒らしています。

 



バブロック

バブロックは、かなり珍しいバブー種で、目撃例もあまり多くありません。北銀河では 「森の主」と呼ばれ、出会うことができれば幸運を授かると言われていました。

北銀河のニョロン星では、ママ母にいじめられて逃げ出した女の子が、森の中でバブロックに助けられて一緒に暮らす、という物語が伝えられています。おそらく地球から持ち込まれた本のなかの童話が、変形したものと思われます。ちなみにその女の子は、森の主と性格の不一致が原因で別れたのち、森の木を切り倒して水車を作り、水力発電で大儲けし、やがて星系大統領に立候補。ママ母の弱味を握って選挙に協力させ、みごと当選することになります。まったく、北銀河の人たちの考えることはわかりませんね。

 



バブーシカ

名前の由来は、「スルーシカ」という言葉から来ています。南銀河の方言で「捉えがたいもの」という意味です。南銀河では、バブーシカは、素早くて用心深く、目撃することすら難しい動物とされていました。じっさいにはしょせんバブーなので、それほど素早くもなく、まして全然用心深くなどないのですが‥‥。なにしろご存知のように、南銀河の人たちはたいへんテンポの遅い人たちで、食事をするのに3日かかるほどですから、そう見えたのは無理もありません。

ただ、このバブーシカが、たいへん数の少ない貴重なバブー種であることは確かです。

 



バブープ

外宇宙からの侵略者ではないかと言われ、長いこと、たいへんおそれられてきたバブー種、それがバブープです。

400年ほど前、東銀河のペンシル星に住むジョゼフ・ジンジン氏47歳が、奥さんのエマリーさんと2人でドライブをしていた時のことです。ひとけのない荒野にさしかかったところで、一天にわかにかき曇り、ひどい豪雨と雷が‥‥。仕方なく車をとめて待っていると、不気味な姿をした生き物が、雨のなかをぺたぺたと歩いてくるではありませんか!エマリーさんはすぐに失神、ジョゼフ氏は必死に恐怖と戦っていましたが、やがて不思議な眠気に襲われ、意識を失ったそうです。

目がさめてみると2人は、満天の星空の下、小さな丘の上に横たわっており、あのふしぎな生き物の姿はどこにもありませんでした。そして、ジョゼフ氏のお腹には、覚えのない小さな傷跡が‥‥。そう、これぞウワサに名高い、キャトル・ミューテーションに違いない!

ジンジン氏夫妻はふるえながら丘を降り、放置してあった自分たちの車に乗って家に帰りました。おそろしいことにそれ以来、ジョゼフ氏はお風呂で放屁するようになり、エマリーさんはドラ焼きを食べると胃にもたれるようになったそうです。

この事件以来、ナゾの宇宙人は人々の悪夢に登場する恐怖の存在になりました。200年後、あれがバブープというバブーの変種にすぎないと判明するまでは。

後年、ジョゼフ氏は、問題のお腹の傷跡を眺めながら、「じつはワシ、子供のときに盲腸の手術をしてたのを、すっかり忘れてたよ。なはは」と語ったそうです。

 



バブトロン

全バブー種のなかでも、もっとも出会うことが難しい、貴重な種類のバブーです。 バブープ同様、正体不明の怪物として人々からおそれられてきました。この怪物と出会ってしまった者は、頭からかじられるが、かわりに来世での幸福を授かる、と伝承に伝えられています。

200年ほど前、つまり、バブトロンと命名されるころに、「怪獣大決戦 ドリラ対エトロン」という映画が作られヒットしました。この映画の敵役、エトロンのモデルは、すばりこの伝説の怪物でした。もっともエトロンは、身長2000メートルの巨体でしたが‥‥。

怪物の正体がじつはバブーの一種だとわかったとき、映画会社の営業さんたちは、正体を明かすのを待ってくれ、とテンカフン博士に泣きついてきたそうです。「もちろん、そんな理由で学問を曲げるわけにはいかん。3000ゼニーふんだくってやったわ、がはははは」とテンカフン博士は語っています。

 



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