クローン

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クローンという言葉を聞くと、つい、危なっかしい生物工学を連想してしまいますが、
もともとは、植物の枝分けのことをいっていたようです。
ご存じのように、植物は枝を切り分け、それを植えることで増えていきます。
他の植物と交配しているわけでもなんでもないですから、枝分けされた株は、
元の植物と同じ遺伝子を持っています。
このように、同じモノを二つ以上にコピーすることをクローンといいます。
ですから、ヒトデみたいに切り刻まれると、それぞれの破片から、
元の体に復元してしまうような場合も、クローンですし、人間の場合でも、双子のうち、
一卵性双生児はみなクローンなんです。
クローン羊ドリーでおなじみのクローンもまた同じ仕組みで、
親(と呼ぶべきか「元」と呼ぶべきか)の細胞を「枝分け」して増やして羊にします。
ところで、私たちの細胞は、受精卵1個からはじまります。
これが2個、4個、8個と分裂していて最終的には60兆個の細胞になります。
細胞が分裂していくと、あるものは手に、あるものは目に、
あるものは心臓というように、役割分担していきますが、
もともとは1つの細胞だったわけですから、
60兆個全ての細胞が持っている遺伝子はみな同じです。
細胞が分裂していくに従って、だんだんと役割分担が決まっていくとき、
全遺伝子のうちで各々の役割に必要な遺伝子だけを使うようになるだけで、
あとは使わず眠らせておく、そういう仕組みになっています。
ですから、手になった細胞も、目の細胞になるための設計図(遺伝子)を
今でも持ってはいるのです。
最初の頃の細胞はまだ、体のどの部分にもなれる可能性を持っています。
(これゆえ、「万能細胞」と呼ばれます)
それが一旦、役割が決まると、もう二度と他の役割には「転職」できないと
言われています。
これはちょうど、我々が子供の時はどんな職業にでもつける可能性があったのに、
大きくなるに従って、どんどんとその可能性が少なくなっていく様子に似ていますね
(ま、我々の場合、転職は可能ですが)。
さて、クローン羊ドリーが誕生したとき、みんながなんであんなに驚いたかというと、
それまでもう転職できないと言われていた役割が決まった細胞を、「万能細胞」に
戻してしまったからです。
大人を生まれたての子供に戻してしまったようなものです。
「万能細胞」にもどった細胞は、再び分裂を繰り返し、
いろいろな役割を持つようになる、つまり1匹の羊になることができたのでした。
それまでの家畜は、優秀な種を残すためには、
優秀なオスの精子と優秀なメスの卵子が必要でした。
さらにそれらを受精させる必要がありました。
これは面倒ですし、特に卵子の場合、数に限りがあります。
それに比べて、クローンは、もう役割が決まった体細胞を、言ってみれば、
受精卵に戻してしまうような技術ですから、数もたくさんできますし、
手間も少ないわけです。
ただし、残念ながらか、安心なことにか、
今の技術では、クローン技術はまだ未発達で、
万能細胞にもどせる確率、それらがうまく育つ確率、ともにまだまだ低いようです。
また、一見、うまく子供の頃に戻ったように見えながら、実は、
遺伝子的にはそうでもない、というような問題も指摘されています。

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